乳がんの診断にMRIを勧められたら?


 今まで1年間にわたり、乳がんの診断にマンモグラフィとエコーは欠かすことができないことを述べて来ました。これからはさらに話しを進めて、他の検査法や治療法について解説していきましょう。

 マンモグラフィやエコーで乳房に異常があると云われ、MRIを勧められた方はいませんか?MRIは、乳がんを診断する上で大切な検査なのですが、どんな検査かご存知でしょうか?日本語では磁気共鳴映像法と云われ、脳や脊椎、子宮や卵巣などの診断に有効なので、既にお受けになられた方もいるかと思います。外見上CTと良く似た装置で、同じような断層像が出てきますので、混同されている方もいるかも知れません。しかしCTとMRIは根本的に違うのです。CTはX線(レントゲン)を利用しますので常に被曝が問題となりますが、MRIではX線を使いませんので被曝がなく妊婦や子供でも安心して受けることができます。

 それではMRIではどのような原理により画像ができるのでしょうか。日本語名から推測されるように、MRIは磁石の原理を応用した映像法で、体の中に無数に存在する水素原子を利用します。MRI装置そのものは巨大な磁石であり、人体中の水素原子も超微細な磁石ということができます。MRI装置の中に人体が入ると、磁石の原理で体の中の水素原子が一定方向に並びますが、条件をいろいろ変化させるとそれらの方向や並び方が複雑に変動します。それを巧みに捉えて画像としているのです。小学校の理科の実験で、鉄粉を撒き散らした紙の上に磁石を持っていくと、N極とS極との間で鉄粉が方向を揃えて何列にも並んだことを覚えている方もみえると思いますが、同じ現象を体の中で起こさせて画像を作っているのです。ですからCTとは根本的に異なる検査法なのです。

図-写真 矢印の白く‘いびつ’な形をした部分が乳がん
 MRIは、脳、脊髄、子宮、卵巣、心臓、骨、筋肉などの診断に有用ですが、乳がんの診断にも大きな威力を発揮します。
 その一つは、腫瘍が良性か悪性か、その鑑別に役立つことです。マンモグラフィやエコーで病変が見つかっても、それが悪性の乳がんか良性の病変か判定の難しいことがしばしばあります。そんな時、MRIが役に立ちます。造影剤を注射してから撮影しますと、得られる画像の違いにより悪性か良性か鑑別できます(図) 。

 もう一つは、マンモグラフィやエコーでは病変が本当に在るのか無いのか判定できない場合があるのですが、そんな時MRIでは病変の有無を明瞭に示してくれます。さらにマンモグラフィやエコーでは乳がんの在ることは分かっても、その大きさや範囲が不明瞭な場合も多いのですが、MRIでは乳がんの範囲を明瞭に示してくれます。病変の範囲を正確に知ることは、手術計画を立てる上で極めて大切であり、切除範囲を少しでも小さくして乳房温存療法を行う上で欠かすことはできません。現在MRIは乳がんの手術前検査法として欠かせないものとなっています。

 ただMRIでは造影剤を注射しなければならないのが欠点ですが、MRI用の造影剤はCT用の造影剤に比べ副作用が少なく比較的安心して検査を受けることができます。マンモグラフィ、エコーその次にMRI、これが現在乳がん診断の定石となっていることをご銘記下さい。

三重乳がん検診ネットワーク代表
三重大学医学部放射線科     竹田 寛