乳がんは2cmまで


 前号では乳がんにかかりやすい人のお話をしましたが、今月号では不幸にも乳がんにかかった場合、どれぐらい治るのかということについてお話します。

 乳がんや胃がん、子宮がん等、たいていのがんは早期がんと進行がんとに分けられます。一般に早期がんであれば90%近くが治りますが、進行がんになると進行の度合に応じて治る率は低下します。早期がんのうちに見つけて治療することが大切なのです。乳がんの場合にはどうでしょうか。乳がんにおける早期がんとは、大きさが 2cm以下で、リンパ節転移も他の臓器への転移も無い状態のものを云います。この時期に手術しますと、成績はきわめて良好です。がんの治ったことを表す指標として「5年生存率」というのがあります。これは、治療してから5年間、再発も転移も起こらず無事に生きておれば、がんが消滅したと考えて良いというものです。たいていのがんは5年間無事であれば治ったと考えて良いのです。しかし乳がんは違います。5年を過ぎても、突然再発や転移の現れることがあります。乳がんは他のがんに比べて厄介者なのです。そこで乳がんでは観察期間を長くして、10年間再発や転移もなく無事に生きておれば治ったとする「10年生存率」を指標としています。早期乳がんで手術した場合の10年生存率は90%を越えています。すなわち、この時期に手術した人の10人中9人は完全にがんが治るのです。ところが、手術時にがんの大きさが2cmを越えていたり、リンパ節に転移していたりして、がんが進行していた場合には、10年生存率は、75%台から50%台に低下してきます。もし他の臓器に転移があったとすると、どんな治療を受けても10年間生きられるのは5人に1人という悲惨な結末となります。とにかく早く見つけて早く治療することが大切なのです。

 さらに乳がんを早期がんの状態で発見することは、女性にとって、もう一つ大きな福音をもたらします。それは手術そのものが軽くて済み、乳房を切除しなくても良いのです。昔は乳がんの手術となると、乳房はもとより胸の筋肉までも大胆に切除してしまうため片方の胸が扁平になり、女性には辛いものでした。しかし現在では早期乳がんに対しては一般に乳房温存手術が行われています。この手術法では、乳房の中のがんとその周囲部分だけを切除し、あと放射線治療を加えるだけで終わります。乳房もほとんど原型のまま残り、左右を較べてもほとんど変わりがありません。女性にとって乳房を切除されるということは耐え難いことであろうと、男の私でさえ容易に理解できますから、乳房を残す手術をして貰えるのであれば、この上無いことでありましょう。現在日本では、乳がんの半数近くが乳房温存手術で治療されているとのことです。それだけ早期で見つかる乳がんが増えていると云えます。しかし進行がんになってしまうと、従来通りの大手術をせねばならず手術後も抗がん剤等の投与が欠かせなくなり医療費も高くなります。

 以上、早期に乳がんを発見すること、とりわけ大きさが2cm以下の時に見つけることの大切さがお分かりいただけたと思います。そのためには、日頃、自己検診に心がけ、常にしこりができていないか注意していることと、マンモグラフィやエコー等による定期検診を受けることが大切です。次号では早期に乳がんを見つけるためにはどうすれば良いかお話します。

三重乳がん検診ネットワーク代表
三重大学医学部放射線科     竹田 寛