乳がんになりやすい人


 前号までは、がんの診断や治療あるいは検診に関して一般的なお話をして来ましたが、そろそろ乳がんについてお話を始めて行きたいと思います。
 現在日本では、毎年3万5千人が乳がんにかかり、約1万人の方が亡くなっています。2000年には女性のがんの中で最多となり、40から50才代の壮年期女性のがんによる死亡原因の一位となっています。10年後には20人に1人ぐらいの割りでかかると言われています。
 食生活や生活習慣の欧米化が日本女性における乳がんを増やしているといわれますが、それではどのような人が乳がんになりやすいのでしょうか。皆さんの一番気になるところと思いますので、今回はそれをテーマとしてお話します。
一般に乳がんにかかりやすい危険因子として次のようなものが挙げられます。
●遺伝の影響
母親、姉妹、娘、母方の祖母やおばなど三親等以内の家族や親戚に乳がんの人がいれば、乳がんにかかる率は2倍になると云われます。また、その方が閉経前に乳がんを発病した場合には、リスクはさらに2倍高くなります。ただし母方の親戚のみが問題であり、父方の親戚の場合には関係ありません。最近では遺伝子解析が進み、乳がんにかかる人の多くは、乳がんの発生を抑える特殊な遺伝子が欠損していることが分かってきました。
●女性ホルモン(エストロゲン)の影響
乳がんの発生や増殖には、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが大きな影響を及ぼします。エストロゲンの作用が長期間続くような場合に乳がんが発生しやすくなりますが、それはどのような場合に起こるのでしょうか。 
  1. 初潮の早かった人(11才未満)や閉経の遅い人(55才以上)
    エストロゲンの分泌される期間が長くなり、乳がん発生の危険性が高まります。
  2. 未産婦
    妊娠中や授乳中には、'プロゲステロン'と呼ばれるもう一方の女性ホルモンが優位となり、エストロゲンの影響が少なくなります。妊娠や出産、あるいは授乳経験のない人はエストロゲンの影響を受ける期間が長くなり、リスクが高まるといわれます。
  3. 30才以上の高齢初産婦
    エストロゲンの分泌のピークは10〜20才代にあります。その時期に妊娠や出産を経験するとエストロゲンの影響が少なくなりますが、最近では結婚や出産年齢が高齢化しているため、若年期のエストロゲン活性の高い時期に強い影響を受ける人が増えています。
●片方の乳房を乳がんで手術した人
反対側の乳房にがんの発生する率は非常に高く、通常の場合の5〜6倍にも及ぶと言われています。せっかく手術が成功したのに数年後に反対側の乳房にがんの発生することがしばしば起こります。これは本当に気の毒な話です。
●肥満の人
肥満の人に乳がんが多いといわれ、特に閉経後の女性では重要な因子です。標準体重の20%を越えるような女性では注意が必要です。
●その他
動物性たんぱくや脂肪の過剰な摂取、アルコール、喫煙、ストレスなども、乳がんのリスクを高めると云われます。逆に植物繊維に富んだ野菜や果物、あるいは適度な運動は、リスクを下げる効果があるようです。
 乳がんにかかりやすい危険因子の主なものは以上ですが、一つでも当てはまる人は注意が必要です。この中には、遺伝などのように自分では何とも仕様のないものもあれば、食生活の改善などによりリスクを減らせるものもあります。できるだけリスクを減らすように努力することが大切ですが、さらに重要なことは定期検診を受けて早期発見・早期治療に努めることです。何度も繰り返しますが、乳がんは早期に発見して治療すれば完全に治ります。決して怖くありません。次回は早期発見すれば如何に簡単にしかも完全に治療できるかということについてお話したいと思います。

三重乳がん検診ネットワーク代表
三重大学医学部放射線科     竹田 寛